パビリオン担当職人よりごあいさつ
みなさまはじめまして、パビリオンを担当していますダイヤモンドカット職人の小野寺です。職人暦は38年になりました。
始めはオリエンタルダイヤモンド工業に入社し、ソーイング(ダイヤの原石を斬り分ける工程)からスタートしマーキング(ダイヤソーイングの位置決めの線を引く工程)やガードル(ダイヤの外形を丸く整える工程)、ポリッシング(ダイヤを輝かせるカットの工程)など、ダイヤモンド研磨のあらゆる工程を経て現在に至っています。
ダイヤモンドには不思議な力があります。原石を斬り、外形を丸く整え、面をカットしていくうちにただ透明な石が人を魅了するまでに光り輝く、なんとも言えぬパワーを醸し出してきます。
58面のラウンドブリリアントカットだけではなく様々なデザインのダイヤモンドの面数や光の分散が放つ輝きの違いは、実際に見ていただくのが一番です。私たちが作り出す万華鏡よりもまばゆい輝きを生み出す工房のダイヤモンドを、ぜひ手にとって見ていただければと思います。
1面1面に全神経を注ぎ、最高の精度で上質なカットをしていくことで美しい模様や個性のある輝きを生み出すのです。工房のダイヤモンドをろいろな方に身に着けていただき喜んでもらうことが最大の喜びです。
私自身こんなに長くダイヤモンドのカット職人として携わってくることができたのも、ダイヤモンドの光輝く様や、簡単ではありませんがダイヤモンドのカットに魅力を感じたからだと思います。これからも一生の仕事とし、努力していきます。
パビリオンをカットするってどんなこと?
ここでは58面のラウンドブリリアントカットのパビリオンを例とします。
パビリオンは画像のダイヤモンドの下の黄色い部分を指します。
ダイヤモンドはガードルから上と下とに分けた2つの大きな部分に分かれます。下の部分全体を「パビリオン」と呼び、ダイヤモンドの輝きを大きく左右する基本となる部分です。
パビリオンは私、小野寺が担当しております。パビリオン完成までの様々な工程をご説明いたします。
クロスワーク(荒削り)をする
クラウン・パビリオンともに8面にカットする。(45°で8分割)
ここでは全ての面に、完成よりも余裕を持たせた角度でカットしておきます。クラウンは36°(完成では34.5°)パビリオンは42°(完成では40.75°)程度の角度にとどめます。後々の工程で完成の角度までカットさせます。
メインファセットをカットする
メインファセットとはその名の通りパビリオンのメインとなる面を指します。
8面あるこの面を、クロスワーク段階では余裕をもった角度(ここでは42°)でカットしてあるため、全て40.75°にカットしなおします。40.75°が一番輝きが大きくなる数値なのです。
ロワーガードルファセットをカットする
ロワーガードルファセットとはガードルの下にあり、メインファセットをちょうど半分で分けるような面のことです。全部で16面になります。メインファセットの2倍の面数をもつロワーファセットは、パビリオンで反射する輝きをより多くより色々な方向へ反射させる、メインファセットを手助けするような面です。
パビリオン完成~クラウン工程へ移行
ここまででパビリオンの工程が完了します。パビリオンにはキューレットと呼ばれる先端があるため、「完全な中心」に「全ての面」をそこへ合わせる細かい調節が必要となる、一朝一夕ではできないような作業が必要になります。
まとめ
パビリオンのチェックでOKとなれば、ここからクラウンの作業になるので山田くんへ渡します。
ダイヤモンドは各段階で全て「カットで面と面の点を揃える」ことがメインになります。長年培った感覚を全てそこに注ぎ込んでします。職人としての誇りの仕事です。