Q. カット(Cut) ってなんのこと?
A. カットとは光の反射量を総合評価したもの
ダイヤモンドのカットとは、磨かれたダイヤモンドの総合評価を5段階にランク分けしたものです。下の画像のようにExcellent(エクセレント)を最上とし、VeryGood(ベリーグッド)Good(グッド)Fair(フェアー)Poor(プアー)と続きます。
「カット」の評価は58面体のラウンドブリリアントカット(一般によく知られているスタンダードな形 詳しくはコチラ)のみを対象とした評価基準です。オーバルカットのような外形が丸ではないダイヤモンドや、工房のオリジナルダイヤモンドのように外形は丸でも58面ではないダイヤモンドには「カット」の評価は、現在の鑑定基準では表示されていません。
カット評価の大きな誤解
Excellent評価にも大きな差があります
以前のカット評価基準は、角度・深さ・大きさなどを理想形に当てはめ比較して評価されていました。
右の画像①が理想形を作り出す数値です。この形にどれだけ近いかを評価したものでした。
現在のカット評価基準では、理想形との比較よりも基準が曖昧になりつつあり、特に光の反射量と反射方向を計算した評価をメインとしたものになっています。
画像②~④は画像①のような理想形からは大きく異なる形をしていますが、鑑定でExcellent と評価される形の例です。
画像②はクラウン面(ダイヤ上部)が薄く、パビリオン面(ダイヤ下部のとがった部分)が深くなっています。特にクラウンの深さが3%も薄くなっているにも関わらずExcellentがでます。
画像③はクラウン、パビリオンどちらも薄く、全体的に平べったい形をしています。こちらもExcellent と評価されます。
画像④は画像②の特徴をさらに色濃くした形です。クラウンがかなり薄くパビリオンがかなり深くなっています。Excellent と評価されるギリギリのラインではありますが、こちらも他の画像同様Excellent 評価がでます。
結果として同じExcellent 評価のダイヤモンドだとしても、輝きに優れたダイヤとExcellent と評価されているだけのダイヤでは大きく差が出ます。海外での大量生産でカットされるダイヤは、Excellent であっても輝き方に違いがありますので注意して見る必要があります。
輝きを左右する「Cut」以外の評価
「カット」の項目には総合評価の他に2種類の評価があります。
1つ、3Ex(トリプルエクセレント)
2つ、H&C(ハートアンドキューピッド)
どちらもあまり知られてはいませんが、総合評価がExcellentの場合のみ重要な意味を持つ、ラウンドブリリアントカットの評価には欠かせないものです。この2種類の評価を説明していきます。
3Ex(トリプルエクセレント)と評価されるには
総合評価Excellentであることを前提とし、以下の「ポリッシュ」「シンメトリー」もExcellentと評価される必要があります。総合評価VeryGoodなどの場合はこの2種類がExcellentであってもあまり意味がありません。
ポリッシュとシンメトリーを詳しく説明していきましょう。
ポリッシュとは
研磨された面の仕上がり具合です。
ダイヤモンドは人間の手で研磨しているため、仕上がりにはウデの差がそのまま輝きに影響します。
世界1硬いダイヤは同じ硬さのダイヤを粉末にしたものを使い研磨されています。(ダイヤモンドパウダーはこんなもの) 硬いものと硬いものを超高速で擦り合わせるので、ただ研磨しただけでは確実に跡が残ってしまいます。ここが丁寧な仕事に定評のある職人の見せ所!特殊な研磨方法で精密に仕上げることでほぼ確実にキレイな仕上がりになります。研磨跡のないものはポリッシュExcellentと評価され、最高の輝きの一端を担う最高の評価になります。(ダイヤは天然の産物であるため、元となる原石が無理やりレーザー加工などされているものでは、その跡を消すことが難しいものもあります)
シンメトリーとは
全ての面の対称性を評価するものです。ダイヤモンドの各面がどれくらい対象に研磨されているかを評価したものです。面と面のズレや大きさなどの精密さが問われます。ラウンドブリリアントカットは8もしくは16分割の面で構成されているため、対象となる面を基準に半分に折りたたんだ場合にピッタリと重なるか・・・というイメージです。右の画像は工房のラウンドブリリアントカットを白黒に透過して撮影したものです。真上から見た場合、このように映る模様がどこを見ても同じということが、シンメトリーをExcellentと評価されるために絶対不可欠なものです。シンメトリーExcellentであっても評価の基準がさほど厳しくないせいか、全てがこの図のように正確なシンメトリーを描くわけではありません。ご自身の目で確認し、本当にその評価に適っているダイヤモンドなのかを見定めることで、最高のダイヤモンドを手に入れる1つの基準になります。
上記2つに総合評価Excellentであれば「3Ex」となります
これら2種類の評価もカット評価と同じ5段階のランク分けをされ、鑑定書に記載されます。総合評価Excellent の場合シンメトリーとポリッシュの評価がExcellent となると、3つのExcellent で3Ex(トリプルエクセレント)と呼ばれ、通常のExcellent より高い評価となります。
H&C(ハートアンドキューピッド)と評価されるには
H&C(ハートアンドキューピッド)とは、専用のスコープでのぞいた場合に見える現象が規定の範囲内でバランスよく写し出される場合の評価です。略してハトキューと呼ばれることも多いです。
簡単に言えば「どの面もしっかり揃っていれば見える模様があり、模様が見えればH&Cと評価される」ということです。
特殊なスコープを使い、下の図のようにクラウンから8本の矢、パビリオンから8つのハートが見える場合にのみ鑑定で評価され、鑑定書に記載されます。
見える形が均等に揃っていることが基準とはされていますが、目視のみというアバウトな基準でもあるためH&Cと評価されるものでも良し悪しはかなりあります。輝きを左右する「面のバランス」をプロでなくとも分かりやすく見ることが出来るものですので、H&Cの購入を考えいる方は一度H&C同士を比較してみるのもいいかもしれません。
「3Ex」と「H&C」、両方が評価されると・・・
3ExH&C(トリプルハトキュー)と呼ばれる、カット評価では最高の評価!
3ExH&C(トリプルハトキュー)は、ラウンドブリリアントカットでは最高の評価となります。
3ExとH&Cどちらかが評価されるダイヤでも、通常のExcellentよりは評価が上ではあります。
しかし「現在の」鑑定基準には「3ExH&C」と言えどある程度基準に余裕があり、同じ評価でも輝きに差があるダイヤモンドがあります。一概にカットの評価だけでは良し悪しが判断できないので注意が必要です。
ダイヤモンドの輝きはダイヤの質に左右されるものだけではなく、デザイナーのアイデアや職人の精密なウデがあれば「評価は確実」であり、比較しても輝きに勝るようなダイヤモンドを作り出せるのです!