ダイヤモンドを理解し
個性や輝きを
デザインに落とし込む

ダイヤモンドは天然の宝石であり、特に変わった性質のある素材です。車や家具のように立体を組み合わせたり曲げたりすることはできず、また服や革製品のように平面から形を作るものでもありません。ダイヤモンドの石としての性質を無視することはできず、どんな形状でもデザインすることができるものではありません。

ダイヤモンドは「非常に高い屈折率」「面の角度、臨界角による光の反射と透過」「天然で最も硬い物質」「靭性が低く衝撃に弱い」「親油性や熱伝導が高い」などの特性があり、それらを含めてデザインを考えていく必要があります。
 
デザイナーの考案したデザインは偶然の産物のようなものではなく、上記の特性を含め輝きを計算を駆使し結果を予想、テーマ沿ったデザインを生み出しています。

ダイヤモンドの特性を活かす

ダイヤモンドの屈折率

屈折率とは、物質に入射・内部反射した光の屈折しやすさの数値です。ダイヤモンドはおおよそ2.417と天然物質の中でかなり高い屈折率を持ちます。
ダイヤモンドの輝くのは「光の入射→内部反射→射出」と「光の表面反射」の2種類がありますが、屈折率とデザインによって大きく変わるのは前者の輝きです。
赤い矢印の始点のように光が入射した場合、線の進行のように光が内部反射し、上部に射出されることで目に見えて輝きます。屈折率を活かすために、黄色の丸で示した面の角度を考慮したデザインが必要です。

ダイヤモンドの臨界角

臨界角とは、物質に入射・内部反射した光が全反射するか透過するかの角度を示す数値です。ダイヤモンドの臨界角はおおよそ24.4°(左右に12.2°の臨界角)と狭く、入射した光を逃しづらい特性があります。
黄色の部分で示した角度に光が入射or内部反射した場合、光は面を通り次の面に向かいます。黄色の部分以外の角度で光が当たった面は、光は全反射します。
こういった光の反射による特製を理解し、その面を何度にすれば最終的に上方向に戻り目に見えて輝くのかを計算することが、デザインの基本となります。

実現可能なデザインかどうかの確認

コンセプトとラフデザインの作成

ダイヤモンドをデザインするにあたって、まずはどんなコンセプトを持ったデザインなのかという考えからスタートします。輝きに重きを置いたダイヤなのか、形に特徴があるダイヤなのか、模様を映し出すダイヤなのかなど・・・どのような意図を持ったダイヤモンドなのかを思案します。
決定したコンセプトをデザインに落とし込みます。しかし相手はダイヤモンド、天然の宝石であるため特性を理解した上でのデザインとなります。どんな面の形状が良いのか・どういう輝きがそのコンセプトに合うのかなどを考え、デザインを試行錯誤します。
 

デザイン決定~各数値計算と確認

デザインを決定したら、次はそのデザインをどのような数値でダイヤモンドのカットにするかを考えます。
ダイヤモンドとは各面に名前があり、それぞれに輝きを生む役割が違います。それぞれの面に角度や大きさ・長さなどを指定します。これらが数値として決まっていないと、研磨職人にどう研磨すべきか伝えることができません。「この面を45°」というように、1つ1つの面の角度などを指定することで、デザインをダイヤモンドに作り上げる基準とするのです。
数値として決まったところで、実際にカットする前に鏡を使った確認作業に入ります。これは、ダイヤモンドという高価な材料を使用するため実際に試作する前にも出来る限りの方法で完成形の確認をとるためです。
対角に並べた鏡の中央に適当なもの(ダイヤの代用)を置き、角度とその写り方や写る形などを確認します。
 

デザイン図面完成

デザインのカタチが決まったところで紙面に書き出します。上記の鏡を使った実験から大まかなイメージを作り、より正確な「完成デザイン」に近づける作業です。
書き出しはまず方眼紙などデザイナー7つ道具(後述)を使い手で書くことでイメージを煮詰めていきます。ここまでの作業よりも細かい部分まで注意し考えることで、完成のイメージがどんどん濃くなり、「ここはこうしたほうが輝く」「もっとこうしたほうが個性が出る」などのように、新たなアイデアが盛り込まれることもあります。
図面は本当に試行錯誤で、一度決定したからといって妥協はせず、コンセプトに沿った理想のデザインが出来るまで何度も何度も書き直し考えます。

完成デザインの数値化~実ダイヤでの研磨

ここまでに決定した「デザイン図面」と「デザインの数値」を使い、それを表に落とし込みます。この表を元に、研磨職人がデザイン通りのダイヤモンドを研磨します。

ここまでの工程だけでは説明しきれないほどの時間と努力が、デザイン完成までに注がれています。
一般的な業種ではないためすべての使用ツールや試行錯誤する方法は工房が独自に考えたアイデアが盛り込まれています。「ダイヤモンド」という世界で1番硬い物質をいかに料理すれば最高のものが出来上がるのか、知識と経験をフル使い実際のダイヤモンドを研磨することでプロトタイプを仕上げます。
プロトタイプは1つだけではなく、よりコンセプトを表現できるよう細部まで何度も調整を繰り返し、デザインとして完成させます。

ダイヤモンドデザイン7つ道具

イチからデザインを考案する方法として、アナログな道具を使い手を動かしながら徐々に煮詰めていくことで考えるのが私は好きです。
発想と経験を駆使しながらじっくり一歩ずつ考えていくことで、ふとアイデアが生まれそれをどう盛り込むのかを繰り返していくと、今までにないデザインのダイヤモンドが生み出されます。
道具はどれも変わったものではありませんが、経験と知識を駆使することで魔法の道具のように活用できます。
 

 

①方眼紙

手書きで試行錯誤するのがデザインの第一歩、しかし数値を明確に考えていく上で方眼紙の目盛りが必須です。最終的にはパソコンで図面を清書します。

②コンパス

ダイヤモンドが一番輝くのは、クラウン面から見て円形のラウンド型を前提としています。正確な完成形をイメージするためにコンパスでキレイな円を書きます。

③定規

ダイヤモンドの面は線で構成されています。立体をデザインするにあたって直線で構成されたダイヤモンドデザインを考えるには絶対に外せないアイテムです。

④雲形定規

「模様を映し出すデザイン」のダイヤモンドように、直線だけではイメージしづらい図形デザインに組み込むための、曲線を書くための特殊な定規です。

⑤テンプレート定規

雲形定規と同じく、直線だけではイメージの湧かない模様などをデザインに落とし込むために使う、様々な図形を書ける特殊な定規です。

⑥分度器

正確なデザイン図面をイメージするためには、線や面の角度も正確に書く必要があります。ごく普通の分度器ですが、ダイヤデザインには欠かせないもの。

⑦関数電卓

面の形は三角形や四角形など幾何学模様で構成されています。イメージだけでは計れない実測の角度や長さなどを考えるために使う、三角関数を簡単に計算できる電卓です。

デザイナーをもっと詳しく知る

MFUマイスター受賞

これまでのダイヤデザイン

ダイヤはどうデザインするか

これまでのデザイナーの歩み

ダイヤモンドをもっと楽しもう

ダイヤモンド工房の中身の紹介や、専門家としてあまり語られない視点でのダイヤモンドの知識などを紹介いたします。

ヒロコガネイコレクション

[新しい輝き・個性のデザイン]

ダイヤモンドの研磨体験

[世界でひとつのダイヤモンド体験]

ダイヤモンドリフォーム

[眠っているダイヤモンドを再び]