カットとは
4Cで唯一
人が手を加えるもの
ダイヤモンドの評価「カット」とは、1面1面の研磨状態から光の反射量などを含め総合評価したもので、その評価を5段階にランク分けしたものです。
「Excellent(エクセレント)」を最高とし、「VeryGood(ベリーグッド)」「Good(グッド)」「Fair(フェアー)」「Poor(プアー)」と続きます。
カットの評価はスタンダードなラウンドブリリアントカットのダイヤモンドのみを対象とした評価基準です。オーバルやマーキス、ペアシェイプのようなファンシーカットと呼ばれるダイヤモンドや、当工房ダイヤモンドのように外形は丸でもラウンドブリリアントカットの面構成ではないダイヤモンドには、現在の鑑定基準ではカットは評価されていません。
後述の「Polish(ポリッシュ)」「Symmetry(シンメトリー)」は、ラウンドブリリアントカット以外のファンシーカットや、当工房のヒロ・コガネイコレクションでも評価されます。

カット評価の詳細
同じ評価でも輝きに大きな差
昔のカット評価の基準は、各面(ファセット)の角度・深さ・面の大きさなどが【理想形(画像①)】にどれだけ近いかを評価しており、5段階しかないカット評価でも段階ごとにしっかりと差がありました。
近年のカット評価の基準は、理想形との比較ではなく光の反射量や反射方向などを特殊な機械により計算し評価することが主となっており、昔と比べ曖昧な基準になっています。
さらにカット評価は5段階しかないため、段階ごとの差が曖昧であり、同じカット評価であっても良し悪しに差があることも多いです。例えば2つのダイヤモンドが同じExcelent評価であっても、良いExcellent・悪いExcellentがあることになります。
また、基準が曖昧になったことで全体的に評価が甘くなったこともあり、どう見ても良いカットとは思えないものでも中間評価であるGoodと評価されていたり、昔の評価ではFairだったものがVeryGoodと評価されているケースもあります。
下記では、Excellent評価にも関わらず輝きの良くない例を挙げます。
ここまでのまとめ
ここまで悪い形状の例を3つ挙げましたが、理想形である画像①との違いはほんの微々たる数値の違いに見えるかと思います。しかしダイヤモンドは1面1面が光を反射させたり光を入射・射出させたりを繰り返すことで輝きます。この違いが輝きを狂わせてしまうことで、最終的な輝きには雲泥の差が生まれます。
結果として同じExcellentと評価されたダイヤモンドであっても、輝きに優れたダイヤモンドと、評価だけはExcellentでも角度などプロポーションの悪いダイヤモンドとでは、埋めようのない輝きの差があることを知ってください。
特に海外の大工場で大量に研磨されているダイヤモンドは、原石からいかに大きく取るかが値段に直結するため最重要とされており、ある程度組み合わせに幅のあるExcellentの範囲に入っていれば良しとしたものも多く存在します。カット評価のみで輝きの良し悪しを決めるのは避けてください。もちろんそうでなく輝きを優先した海外製Excellentもありますので、
最終的には目で見て判断していただく必要があります。
「Excellent」という評価だけ惑わされず、自分にとって素晴らしい輝きのダイヤモンドに出会うことが最高の満足につながります。
総合評価以外のカット評価①
3Excellent(トリプルエクセレント)
3Excellentとは、上記のカット総合評価Excellentを前提とし、Polish(ポリッシュ)とSymmetry(シンメトリー)の評価もExcellentである場合、3Excellentと呼びます。
PolishとSymmetryは、カット総合評価と同様にExcellent~Poorの5段階で評価されます。

Polishとは
研磨された全ての面の研磨の跡が残っていないかどうかをチェックし評価するものです。ダイヤモンドは人が手で研磨しているため、技術の差が仕上がりの差に直結し輝きに現れます。
天然ダイヤモンドは地中深くで作られますが、その結晶が成長する過程で「結晶方向」が決まります。結晶方向はダイヤモンドによって全く異なります。
結晶方向イコール「研磨できる方向」であり、これを無視して研磨することはできません。無視しないまでもしっかり方向を検証した研磨をしないと、面に【研磨痕】が残ってしまいます。この研磨跡のことをPolishと呼び、Polishがどの程度の深さ・数で残っているかを評価しています。
Polishが出ないように研磨することは簡単ではありませんが、当工房の職人の技術の見せ所でもあります。結晶方向の検証を繰り返し、検証によって生じる研磨のズレなども精密に仕上げることで、最高の仕上がりを生み出します。研磨跡のないものはPolish:Excellentと評価され、最高の輝きの一端を担う最高の評価になります。
※原石の時点で結晶方向が1つではない「多結晶」のダイヤモンドや、結晶方向を無視し強引にレーザー切断されているダイヤモンド等では、Polishを完全に消すことは難しいものも存在します。
Symmetryとは
研磨された全ての面の対称性を評価するものです。ダイヤモンドの各面がどれくらい対象に研磨されているかを評価したものです。面と面のズレや大きさなどの精密さが問われます。ラウンドブリリアントカットは8もしくは16分割の面で構成されているため、対象となる面を基準に半分に折りたたんだ場合にピッタリと重なるか・・・というイメージです。右の画像は工房のラウンドブリリアントカットを白黒に透過して撮影したものです。真上から見た場合、このように映る模様がどこを見ても同じということが、シンメトリーをExcellentと評価されるために絶対不可欠なものです。シンメトリーExcellentであっても評価の基準がさほど厳しくないせいか、全てがこの図のように正確なシンメトリーを描くわけではありません。ご自身の目で確認し、本当にその評価に適っているダイヤモンドなのかを見定めることで、最高のダイヤモンドを手に入れる1つの基準になります。



総合評価以外のカット評価②
H&C(ハートアンドキューピッド)

H&Cとは、専用のスコープでのぞいた場合に見える現象が規定の範囲内でバランスよく写し出される場合の評価です。略してハトキューと呼ばれることも多いです。
バランスを評価するものですので、上記シンメトリーと似ている評価であり、どちらかだけが良いということはなく、シンメトリーが一定以上の評価であることがH&Cの条件でもあります。
面のシンメトリーが良く、大きさのバランスも良いことで見える模様を理想形とし、いかに理想形に近いがでH&Cと評価されるかが決まります。
特殊なスコープを使い、下の図のようにクラウンから8本の矢、パビリオンから8つのハートが見える場合にのみ鑑定で評価され、鑑定書に記載されます。
見える形が均等に揃っていることが基準とはされていますが、目視のみというアバウトな基準でもあるためH&Cと評価されるものでも良し悪しはかなりあります。輝きを左右する「面のバランス」をプロでなくとも分かりやすく見ることが出来るものですので、H&Cの購入を考えいる方は一度H&C同士を比較してみるのもいいかもしれません。
上記2評価でExcellentの場合・・・
カット最高評価「トリプルハトキュー」

3EXHC(通称トリプルハトキュー)とは、ラウンドブリリアントカットのカット評価で最高の評価となります。
①「Cut総合評価」「Polish」「Symmmetry」の3つの評価が全て【Excellent】であること
②ハートアンドキューピッドの「パビリオン部の8つのハート」「クラウン部の8本の矢」が既定の形状で見えること
これらの要素をクリアしたダイヤモンドのみ、カットの最高評価であるトリプルハトキューと呼ばれるダイヤモンドになります。
しかし、現在の鑑定基準は全体的に幅があります。「3EXHC」であってもある程度基準に余裕があり、同じ3EXHC評価であっても全く同じ輝きというワケではなく、意外と輝きに違いがあります。カット評価というものは輝きの良し悪しの判断基準の1つにはなりますが、それだけでは判断できず、実物のダイヤモンドを見ていただいて輝きを判断していただくのが肝要です。
カット評価のまとめ
カット総合評価は5段階と段階が少なく、1つの段階に入る幅が広いです。そのため、たとえ同じExcellent評価でもどれも同じ輝きなわけではなく、形状の違いによる輝きの良し悪しがあります。
また、カット総合評価には「PolishやSymmetryの評価」「ハトキュー評価」という評価が付随します。これらも輝きを判断する1つの材料にはなりますが、やはり評価内に幅があるため、これらだけで良いダイヤモンドかどうかを判断するのはできません。
1つ1つの評価の差は微々たるものです。カットは評価だけを見るのではなく、実物のダイヤモンドの輝きを見て、ご自分で良いと感じたものを選んでいただくのがベストだと考えます。